きよなり社会保険労務士事務所の中野です。
今回は、給与を受ける人が所得税として支払う際の計算対象となる所得の金額を下げる(=所得税として支払う額を減らすことができる)、所得控除について調べてみました。
所得控除は、所得税額を計算するときに納税者それぞれの個人的な事情を加味しようとする制度で、
それぞれの所得控除の要件を充足すれば、所得金額から所得控除の合計額が差し引かれ、所得税額は、その残りの金額を基礎として計算されます。
会社員の方の場合、年末調整時に(自営業の方は確定申告時に)、加入している保険の保険料控除証明書を提出したり、住宅ローンの年末残高証明書、「年末調整のための住宅借入金等特別控除証明書」等を提出したりすることがあると思いますが、これは所得控除を受けるための手続の一つです。
所得控除には、次のようなものがあります。
- 社会保険料控除
- 医療費控除
- 生命保険料控除、地震保険料控除
- 小規模企業共済等掛金控除
- 寄付金控除
- 配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除
- 障碍者控除、寡婦控除、ひとり親控除、勤労学生控除
- 住宅借入金等特別控除
- 雑損控除
- 基礎控除
このうち、今回は、医療費控除、寄附金控除、配偶者控除、扶養控除、住宅借入金等特別控除、基礎控除についてお話ししたいと思います。
医療費控除とは
医療費控除は、自分自身や、生計を同じくする配偶者、その他の親族のために医療費を支払った場合、その支払った医療費が一定額を超えるときに受けることができる所得控除です。
・控除される額
医療費控除で所得から控除されるのは、次の計算式で求めた額です。
支払った医療費の合計額 ― 保険金などで補てんされる金額 ― 10万円(※) |
※ただし、その年の所得が200万円未満の人は、10万円ではなく所得の5%の金額を差し引きます。
・手続
医療費控除は、会社の年末調整では申請できず、確定申告で申請する必要がある点に注意が必要です。
寄付金控除とは
寄付金控除は、国や地方公共団体、特定公益増進法人などに対し、「特定寄附金」を支出した場合に受けることができる所得控除です。
代表的なものに、ふるさと納税による控除があります。
・控除される額
所得から控除される額は、
【その年に支出した特定寄附金の合計額-2000円】 (その年の総所得金額等の40%相当額がその年に支出した特定寄附金の合計額より低いときは、【その年の総所得金額等の40%相当額-2000円】) |
になります。
配偶者控除とは
配偶者控除は、12月31日時点で、次の4つの要件に当てはまる控除対象配偶者がいる場合に受けることができる所得控除です(ただし、4つの要件に当てはまる配偶者がいても、納税者本人の合計所得金額が1,000万円を超えるときは、この控除は受けられない点に注意が必要です)。
・配偶者控除を受けられる控除対象配偶者の要件
- 法律上の配偶者であること(内縁の妻や内縁の夫は含まれません)
- 納税者と生計を同じくすること
- 年間の合計所得金額が48万円以下であること
(給与のみの場合は給与収入が103万円以下であること)
- 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でないこと
・控除される額
また、控除される額は、納税者の所得金額・配偶者の年齢によって次のように決まっています。
控除を受ける納税者本人の |
控除される額 |
|
一般の 控除対象配偶者 |
70歳以上の 控除対象配偶者 |
|
900万円以下 |
38万円 |
48万円 |
900万円超950万円以下 |
26万円 |
32万円 |
950万円超1,000万円以下 |
13万円 |
16万円 |
扶養控除とは
扶養控除は、配偶者以外の親族で、その年の12月31日時点の年齢が16歳以上の人がいるときに受けられる所得控除で、次の4つの要件に当てはまる必要があります。
・控除対象となる親族の要件
- 配偶者以外の親族(6親等内の血族及び3親等内の姻族)であること
- 納税者と生計を同じくしていること
- 年間の合計所得金額が48万円以下であること
(給与のみの場合は給与収入が103万円以下であること)
- 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でないこと
・控除される額
控除される額は、控除額は、扶養親族の年齢、同居の有無等によって次のように決まっています。
区分 |
控除される額 |
|
16歳以上の一般の控除対象扶養親族 |
38万円 |
|
19歳以上23歳未満の扶養親族 |
63万円 |
|
70歳以上の 扶養親族 |
同居以外 |
48万円 |
同居 |
58万円 |
住宅借入金等特別控除とは
住宅ローン等を利用して、マイホームの新築、取得又は増改築等をし、令和3年12月31日までに自己の居住の用に供した場合で、一定の要件を満たすときに、その取得等に係る住宅ローン等の年末残高の合計額等を基として計算した金額を、居住の用に供した年以後の各年分の所得税額から控除できるものです。
詳細は、こちらの国税庁のページをご確認ください。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1213.htm
基礎控除とは
上の4つのほか、確定申告や年末調整において所得税額の計算をする場合に、総所得金額などから差し引くことができる基礎控除があります。
基礎控除は、納税者の所得に応じて、次のように定められています。
納税者本人の合計所得金額 |
控除される額 |
2,400万円以下 |
48万円 |
2,400万円超2,450万円以下 |
32万円 |
2,450万円超2,500万円以下 |
16万円 |
2,500万円超 |
0円 |
所得控除のうち、会社員の方がよく使う制度についてお話しました。支払う所得税が個別の事情に応じて適法に減額されうる制度なので、知っておくと役に立つと思います。
私自身も、医療費控除を申請するために、今年は確定申告を行いました。
医療費控除以外の控除は、年末調整やふるさと納税のワンストップ特例制度で対応できますが、医療費控除は確定申告のみで申請できるため確定申告を行いました。
現在は、スマホでも確定申告ができるようになっていますので、関心のある方は次のリンク先をご確認ください。
スマホ申告に関する手引き等(令和2年版)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2020/kisairei/sp/index.htm